2008年11月

2008年11月26日

病名変更についての一考察

 1型糖尿病に関しては、以前から、患者側からの病名変更の強い希望があります。
日本IDDMネットワーク(特定非営利活動法人)のアンケート調査では、66.7%の方が、変更を希望していました。(平成12年度調査)
 大きな理由のひとつは、わが国の糖尿病の大半を占める、2型糖尿病=糖尿病 というイメージが、世間では常識になっているからでしょう。
 「糖尿病」と聞くと、多くの大人は、糖尿病=生活習慣病という知識から、「食べすぎで肥満だから。」「甘いものばかりたべているから。」「家系がそうだから。」等と思うようです。(2型糖尿病でも、必ずしもそうでない場合もあるのに、)世間一般の偏見を何とかしたいものです。まして、1型糖尿病は、発生機序が全く違うし、治療も異なります。
 そうした理由のために、病名を言いたがらない患者さんが数多くいます。うちの場合も、子どもには病名を告げていません。変な誤解を他人(特に大人)にされたくないからです。

 日本IDDMネットワークでは、設立時(平成7年9月)から の検討事項である「糖尿病」という病名の変更に関して、いろいろな議論があるようです。
そこで先頃、日本IDDMネットワークでは全国8カ所での 意見交換会並びに意見募集を実施しました。
 参加できなかった方の為にメールやFaxでの意見も募集しているそうです。
 E-mail:iddm@saga-cs.org   FAX:0952-20-2062

 詳しくは日本IDDMネットワークHPからどうぞ 。
 http://www5.ocn.ne.jp/~i-net/

 ちなみに、先日の患者会でも、この 日本IDDMネットワークからの病名変更についてのアンケートが配られました。
 
 個人的には、そもそも、医学教育からして、1型糖尿病と2型糖尿病の違いを伝えようという認識が甘いと思っています。専門医でない医者からの、心無い一言に傷ついた経験のある方は、周りに沢山います。かく言う私も、です。ただ、私の場合は、医療従事者の事情も分かるので、傷つくというより、まあ仕方ないか、というあきらめのようなものですが。悲しい

 例えば、発症したての頃、職場の看護婦さんから、「甘いものばかりやっていちゃだめなんですか?うち、結構やっているんですけど。」と言われました。

 ・・・あの、うち、甘いものは一切やっていないんですけど。それに、1型って、そんなことでなるんじゃないんだけど・・。落ち込み

 また、発症数ヵ月後、職場の医師から、「まだ、注射しているの?」と。

 ・・・あの、1型って、治療はインスリン注射(またはポンプ)しかないんですけど・・。2型みたいに、内服薬や食事療法、運動療法では、治らないんですけど・・・。落ち込み

とまあ、こんな具合です。

 手前味噌で申し訳ないのですが、精神医学関連病名で、ここ数年で、病名変更になったものがあるので、少し詳しくご紹介します。
 統合失調症(旧:精神分裂病)と、認知症(旧:痴呆)です。
 
 統合失調症は、1993年、全国精神障害者家族連合会(当時)が、日本精神神経学会(わが国最大の精神医学関連の学会)の理事会にあてた「精神分裂病は侮蔑的な呼称なので変更して欲しい」という要請で始まりました。それから様々な議論がなされ、2002年に学会で「統合失調症」という新病名が承認され、厚生労働省が全国に通知しました。「精神分裂病」に用語が統一されて以来,実に64年ぶりのことです。
 それによって、医療現場では、病名告知率が格段に増え、一般人に対しては、全てとはいいませんが、病気自体のマイナスイメージがプラスイメージへと変化しつつあります。私の周りの医師たちの間でも、始めは「統合失調症と言うのは、どうも口の辺りが面映い。」といった意見も聞かれましたが、現在ではほぼ100%に近く、新病名が使われています。
 
 もうひとつは、「認知症」です。こちらが変更になった経緯は、統合失調症とは全く違うものです。
 日本語の日常的用語としての「ぼけ」や「痴呆」は、病名というよりも、当事者の老化にともなう生理的変化が、周りの人たちによって問題化された時のレッテルとして使われることが多いようです。もちろん、医学用語の「痴呆」とは、意味合いに乖離があります。そのため、病名として痴呆症(dementia)を使っていた老年精神医学会を中心とした医師や研究者たちが、病名の変更に関する協議を2004年から開始しました。そこから、「認知症」という呼称が厚生労働省に提案されました。その後、厚生労働省が一般の人たちに意見を募集したところ、56.2%の回答者が「痴呆」に不快感を持っていることが判明しました。(思ったより少ないですよね。)実は、端的に言うと、医療や福祉の現場での意見などは変更の必要なしというものが多かったのです。さらにいうと、患者家族会である「呆け老人をかかえる家族の会」(2006年6月以降(社)認知症の人と家族の会と改称)や医師会が主張する性急な変更の必要がないという少数意見は、ほとんど無視されたようです。厚生労働省が、その変更を推し進めた背景には、来るべき超高齢化社会の存在があったとも聞きます。
 以上、大まかにまとめると、一部の専門家たちの意見が取りまとめられて、厚生労働省から一般人に流布された、といった流れでしょうか。余談ですが、「認知症」という病名は医学的には正しくない、といった反対意見もありました。しかし、その後、日本老年精神医学会が、2005年に正式に「痴呆」という病名を「認知症」に変更する、と結論を出しました。しかし、当時は、厚生労働省から通知があったという色合いが強く、医学会では「痴呆」が正式用語として使用されていました。
 それにもかかわらず、「認知症」という言葉は世間一般に広く知れ渡りました。介護領域では、「認知症」は正式な用語として使用されています。そして医療現場でも、患者さんに説明する時はもちろん、医学会雑誌にも、「認知症」という言葉がどんどん使われているという現状です。
 
 さて、もうひとつ、精神医学関連で「うつ病」という病名があります。近年、精神科関連の病気が一般に知られるようになって、この「うつ病」という病名も,よく耳にするようになりました。しかし、10数年前までは、社会人がうつ病にかかると、「会社に言わないでください。クビになりますから。」と、医者が言われる場合が非常に多かったのです。一般的には、「精神病=異常、気ちがい」のように思われることが多々ありました。それが今では、「うつ病」といえば、医者の診断書さえあれば、大手を振って休職できる病名の一つとなったのです。それは何故でしょうか。
 もちろん、一般社会に精神科疾患が身近なものとして感じられるようになったという、社会の風潮もあります。しかし、大きなきっかけとなったのは、平成12年の電通過労事件によって、社会的にうつ病がクローズアップされたことです。電通過労事件とは、社員が長時間労働を長期にわたって強いられ、うつ病を発病し、自殺となった事件です。最高裁は、安全配慮義務違反として会社の賠償責任を認定しました。それから徐々に、企業もメンタルヘルス対策に力を入れ始めました。現在では、1000人以上の企業のうち、そういった対策を行っているものは実に99.8%となっています。

 1型糖尿病に対する誤解と偏見を打開するにあたって、以上の3パターンの方法が参考になると思います。

まとめると、
1)病名変更をする
a.「精神分裂病」パターンのように、患者側の声を医療サイドに届ける。最も正攻法でしょうか。
b.「痴呆」パターンのように、社会情勢を利用して、何らかの形で厚生労働省経由で通知してもらう。2007年から、世界糖尿病デーが毎年11月14に指定され、今後間違いなく増え続けるであろう2型糖尿病に、世界の注目が集まっています。この流れに便乗して、是非、1型糖尿病のことを世間に流布したいものです。
2)病名自体を広く知ってもらう
「うつ病」パターンのように、病名自体を世間一般に知ってもらう。「うつ病」の病名が世間に広まった点については、患者の病院受診の垣根を低くした、という面で評価できます。しかし反面、「うつ病」という概念が広大になりすぎ、使用のされ方が混乱と誤解を招くことも多くなっています。このようなことが起こらないよう、注意が必要です。

 私個人は、患者の立場では、可能なら是非、病名変更してもらいたいと願っています。しかし、医者の立場では、残念ながら、それは難しいだろうと思います。なぜなら、糖尿病の定義に、1型糖尿病の病態はそっくり当てはまるからです。1型と2型の違いは、発症機序の違いに他なりません。また、起こりうる合併症も同じです。「1型糖尿病」を病名変更するなら、それこそ「糖尿病」自体を変更という話も出てくるかもしれません。

 でも、やはり患者自身が不利益を被る病名は、適切ではないと考えます。わが国は「言霊の幸はふ国」と美称される所です。言葉は時と共に変化していきます。1000年前に書かれた、日本が世界に誇れる最高文学である「源氏物語」が、今や携帯小説にもなる時代です。そうやって表現形式は変わっても、その内容はきっとこの先も、脈々と引き継がれていくことでしょう。病名もまた然り、最終的には、当事者本人達が決めていい時代ではないのでしょうか。
 
 子供たちのために、未来が、誤解と偏見のない住みよい社会になって欲しいと願って止みません。

2008年11月19日

シックデイ?

 11月14日(金)の明け方より、chiroは嘔吐を3回しました。その2週間くらい前から、咳を時々していました。熱はなかったのですが、14日は幼稚園は休み、病院へ行って薬を飲み始めました。今はすっかり元気で、17日(月)から幼稚園へ行っています。
 しかし、14日からどういうわけか、血糖が低い!のです。一般的に、シックデイといって、感染症などの病気になると、血糖が高くなることが多いです。今回は、嘔吐と下痢も少々あったので、食べ物の吸収が悪いせいかしら?とも思いましたが、症状は今は治っています。
 普段の6~8割の割合でインスリンを入れていますが、結構な確立で低血糖になっています。(もちろん、自覚症状があるので、意識消失なんて事は全くないのですが。)
 おかげで血糖コントロールはよくなったものの、いつ反動(逆に高血糖になる)が来るかと思うとちょっと怖い汗です。

2008年11月19日

預かり保育もいい感じに

 預かり保育も、本人のご要望により、10月14日は17時まで、11月6日は17時15分までの2回を試してみました。2回とも大成功です。
 16時過ぎに、先生の方で園児達全員に、煎餅やクッキーなどのちょっとしたおやつを配るそうです。それが功を奏しているようです。
 11月6日は、15時過ぎに、K先生のご判断で、チョコをひとつ食べさせてくれていました。それも丁度良かったようで、帰宅時17時半は、血糖64と、夕食前の値としては丁度いい感じでした。
 たまにはそうやって、預けてみるのも案外いいかもなあ、と思うこの頃です。がんじがらめに管理しても、コントロールできるものではないですしね。

 でも、どうしても幼稚園に行っている間は、低血糖を避けたいという気持ちのためか、高血糖気味になってしまいます。程よい加減って、難しいですね。ペンギン

2008年11月19日

11月検診日&低血糖!

 11月5日に、検診に行きました。
HbA1c7.5%。予想通り、前回より上がりました。
この一ヶ月のまとめは
1)朝食後1時間値が、300台と上がり気味。朝食直後にバンと入れると、昼前低血糖気味になることもあるので、どのくらい増やすか思案中。感覚的には、朝食後の今までのインスリン量+0.3~0.4単位かと思う。

やはり、体重増加&運動量の変化が一因でしょうか。(体重は0.2?位しか変わってないけど。)
先生は、朝は+0.5単位くらい入れれば、と提案されていました。

 さて、その後、予定の栄養指導に伺いました。
栄養士さんのお話では、好き嫌いの攻略法として、細かく砕いて何かに混ぜる、盛り付けを工夫する、食べられたらいっぱい褒める、等いくつかアイデアを出していただきました。chiroは、混ぜ物がきらいなので、前途多難ですが、あきらめずに地道にやっていこうと思います。汗

 驚いたのは、その最中です。栄養士さんと私が話をしている間、食べ物おもちゃの磁石で元気に遊んでいたchiroが、突然床に寝転びました。続いて私の隣にやってきて、イスに寝転がってしまいました。前日、芋掘り遠足でもあったので、初めは、疲れて眠いのかな?と思いました。しかも、その一時間前に診察室で測った血糖は161。悪くないです。
 でも、うとうとするchiroの表情が、何かおかしい。はてな
 顔色が悪く、唇が僅かですが小さく震えています。低血糖かも!ととっさに思いました。測定するとなんと25!! ほっぺたをたたいて何とか起し、チョコを食べさせました。食べるとすぐに寝てしまいました。
 いや~、驚きました。病院へ来る途中、車中でせんべいを食べたので、インスリンを入れました。その時、気持ち0.1多いかな、と思ったのですが、どうせ病院で測るし、最近血糖が高めなのでいいかと思ってしまいました。それに、今まで低血糖の時は、必ず私に訴えることができていたので、安心していたのです。今回は、目の前に私がいたのに、何も言いませんでした。 
 
 chiroは10分位寝た後、また起きて、何事もなかったように元気にしていました。聞いてみると、「お母さん、お話していたから(低血糖のことを言えなかった)。」と言います。いや、子どもながらに気を使うのですね。少しずつ、成長するにつれまた違う意味で、やはり注意が必要だと感じました。

 でも、ある程度は血糖の変動は予測できることが多いのです。(もちろん、そうでないこともありますが。)今回は、測定日ゆえになるべく血糖を低くしようと、色気を出した私の失敗でした。あまり神経質になってしまってはしょうがないので、日常はあくまで、おおらかに過ごして行こうと思っています。まる


2008年11月18日

’08懇談会

11月1日に、毎年恒例の懇談会が開かれました。患者さんやその家族が集まって、日ごろの生活で困っていることなどを相談したり、情報交換する場です。私は、参加するのは3年目になります。毎回、先輩のお母さんたちから、学校生活や幼稚園生活のいろいろな情報、アドバイスを聞くことができ、大変ためになります。
 この日は、例年に比べて参加者が少なかったけど、ざっくばらんにいろんなお話が聴ける貴重な時を過ごすことができました。
 昨年に発症した3歳のお子さんがいらっしゃいましたが(chiroより年少者の方にお会いするのは初めてでした。)、来年度の幼稚園入園のことでお困りの様子でした。役所に病気のことを話して、入園のことを相談されたようですが、「自己注射ができるようにならないと、保育園も幼稚園も入れません。」と、無下に断られたそうです。これには、会のメンバーも驚き、「役所の人が何にも知らないだけ。」と皆であきれてしまいました。先生も、「そんな話は気いたことがない。」と言っておられました。患者の絶対数が少ないので当然と言えば当然かもしれませんが、まだまだ理解されていない病気なんですね。それにしてもそのお役人の、無知ゆえの(?)横柄さに、正直驚きました。現実には、chiroのように、幼稚園入園前に発症していても、無事に入園した方が、患者会の中でも結構いらっしゃいます。そのことを是非知ってもらいたいです。

 会の途中、休憩時間におやつタイムとなり、子供達はそれぞれ血糖を測ったり、ポンプのスイッチを押したり、注射をしたりしていました。患者会では普通の光景です。おやつが入ったせいか場も和み、皆思い思いに雑談していました。
 
 最後に、ちょっと嬉しいエピソードもお聞きすることができました。
患者会では、毎年、小学生以上になると参加できるサマーキャンプが行われます。そこで、スケッチコンクールが催されるそうです。全国規模にて、ノボ ノルディスクファーマー株式会社主催(後援は日本糖尿病協会)です。グランプリは一点で、翌年のキャンプ参加者に配られるTシャツの絵柄になります。
 今回は、患者会のTさんが、優秀賞受賞されたということです。おめでとうございます!クラッカー
 もうお一方は、区からある賞をもらうことになりそう、というお話でした。こちらの方は、内定ということで、決定しましたら、改めて後日ブログでお知らせしようと思いま~す!ふふふ、楽しみですね。笑い

 会は、予定時間を少しオーバーして、無事終了となりました。代表のSさん、司会のSさん、準備してくれたNさん、Uさん他、沢山の方にお世話になりました。この場を借りて、御礼申し上げます。

 


記事検索
最新コメント