発症時のこと

2008年04月06日

発症時のこと

 これといった病気をすることもなく、すくすくと大きくなったchiroは、2005年7月に満一歳となりました。それと同時に、母の一年間の育児休暇も間もなく終わろうとしていました。9月からの復帰に備え、職場の病院内の保育所入所の予定も決まり、役所のファミリーサポートセンター(働く主婦のために、地域の方がサポートしてくれる制度)に登録も終え、後は復帰を待つばかりでした。
 
 8月の12日(金)、猛暑の中、私は、長女とchiroを連れて、カステラの菓子折りを手土産に、地域のサポーターのAさんにご挨拶に行きました。帰りに、近くの公園でお姉ちゃんが遊びたいと言ったので、少し寄り道しました。chiroはベビーカーの中でしたが、なんとなく元気なく座っていました。その後ファミレスで食事は全部平らげましたが、帰宅後はごろごろしてそのまま寝てしまいました。
 
 その日は、夫は仕事で、私たち3人は、夕方から祖父母のうちへ遊びに行きました。車の中で寝ていたchiroは、祖父母宅へついてから起きましたが、なんとなくごろごろして、元気がありませんでした。そしてなぜか、熱もないのに呼吸が少し荒いようです。おかしいのは、いつも旺盛な食欲がないことでした。ほとんど食事には手をつけません。 
 
 その時、以前職場で学んだ「子供は、水分が取れていれば大丈夫。」(注:大雑把な言い方ですが、大抵の場合は真実です。)というセオリーを思い出しました。それに従って、ポカリスエットを飲ませました。すると、がぶがぶ飲み干すではありませんか!軽い脱水なのかと思い、その時はとりあえず大丈夫、と判断しました。その夜帰宅する予定でしたが、外は雨風が強く雷も鳴りだしました。chiroの体調のことを夫に電話で相談して、その日は祖父母宅へ泊まりました。
 
 しかし、翌朝になっても状況は変わらず、それどころか肩で大きく呼吸していて、やはり苦しそうです。しかし、発熱もなく、肺雑音もありません。いったいこの状態は何なのか、さっぱり分かりませんでした。一応、仕事中の夫に連絡して、状況を伝えました。夫の判断も、私と同じ、軽い脱水かな、というものでした。
 
 その日は土曜日でした。間もなく12時が迫っていました。近所の小児科の診療時間の終了が来ようとしていた頃、やはり、一度見てもらったほうがいいだろうととっさに思い、祖父の車で急いで病院へ向かいました。
 
 受診結果は、やはり同じ脱水症もしくは、風邪の引き始めかと、言われました。とりあえず安心はしたものの、その先生の「夕方までは、見ていて大丈夫と思います。」と何気なく言った言葉が、ひっかかりました。確かに、この状態が続けば、尋常ではないので、どこかに入院させてもらった方がいいだろうと漠然と思いました。
いただいた風邪薬は、必要ないと思って飲ませませんでした。
 
 夕方にかけて、chiroはずっと寝ていました。その間は、やはり苦しそうな肩呼吸が続いていました。夕方、祖父母の車と家の車で、自宅に皆で向かいました。車中で急激に状態が悪化し、帰宅した時は、呼吸の度に鳩尾が陥没するような激しい呼吸でした。すぐさま病院受診するためにまた車に乗り、帰宅途中の夫を駅で拾って、そのまま救急病院にかかりました。
 
 病院では血液検査が一通り行われた後、ベッドの上で、血糖測定がなされました。その時の数字がなんと530mg/dl !!! 私は、自分の眼を疑いました。(ちなみに、空腹時の正常値は110mg/dl以下です。)育休を取っている間、小児科の血糖測定器の単位が変わったのかしら?等と、本気で考えました。それとも、一過性にストレスで血糖が上がっているだけかしら?そうに違いない、ととっさに思ったので、この期に及んでも、間抜けなことに、糖尿病とは思いもしませんでした。とにかく受診できた安堵感でいっぱいだったのでしょう。
 
 ひとまず入院になり、私たちは帰宅しました。冷静になってみると、いろいろなことが頭に浮かびました。まず、このまま血糖が自然に下がらなければ、おそらく糖尿病であること、一生インスリン注射が必要なこと、脳浮腫等合併症が起きていないかなど…。夫と私は祈るような気持ちでその一晩を過ごしました。その後は、いろいろな検査が行われましたが、やはり血糖は自然には戻りませんでした。
 
 私たちの祈りも空しく、最終的に「1型糖尿病」と診断されました。幸い、その他の合併症は起きていませんでした。後から、主治医から、入院時の血液検査で、pH6.78だったと聞いて驚きました。これは、インスリン量低下により、代謝性アシドーシスとなった結果ですが(それを代償するために、ひどい呼吸状態になっていたのです。Kussumaulの大呼吸といいます。)、6.78という数字は、本当にひどいものでした。例えば心停止で救急に運ばれてくる人が、このような数字でもおかしくない位で、まさに瀕死の状態だったと思います。

 実際、小児では、この病気で同じように発症する方が少なくないようです。こういった状態を、「糖尿病性ケトアシドーシス」といいます。 
言い訳するわけではないのですが、知人の小児科医何人かに聞いてみたのですが、やはり「初めの時点で自分が診察したとしても、血液検査までしないし、まず分からないだろう。」と言われました。それくらい、頻度の少ない病気なのです。
 
 一般には、小児で、1~2人/10万人の発症率といわれています。その中でも多いのは、4~5歳及び10~15歳位です。chiroのような、1歳の発病は、極めてrareといえると思います。

この疾患は、原因はまだよくわかっていませんが、ウィルス感染などがきっかけとなって発症することが多いです。

chiroの場合、丁度入院一か月前に、三種混合の予防接種を打ちました。その翌日熱が出ました。chiroは、それまで一度も熱を出したことがありませんでした。だから、おそらくその時が、発症のきっかけだったのではないかと思っています。
 

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